Yuthanan

 

FEATURE

2021.9.6

THE SETTERS vol.1
Nicolas Yuthanan Chalmeau
「今」の生き方を表現するシンボリックな存在にフォーカスし、その人のワードローブを公開する特集【THE SETTERS】。普段は見ることができないプライベートに迫り、クリエイティブに富んだ世界観や独自の視点からセレクトされたファッションアイテムをメンテナンス方法を交えて紹介する。Vol.1はソーシャルメディア時代のTHE SETTERS、Yuthananのクローゼットをフィーチャーする。   ITEM1 “Sillage” Oxford Shirt (drawn by Naoyuki Yoda) まず最初はYuthanan自らディレクションしているブランド”Sillage”のオックスフォードシャツを紹介する。ビッグシルエットを好む彼らしいサイジングのシャツはSillageのファーストコレクションのもの。そして世界に一つだけの特別なものだ。その理由はシャツに描かれたイラストにある。元々無地だったシャツだが、リリースから1年後にYuthananは気分を変えるために盟友であるイラストレーター・依田直之にシャツへの直接ドローイングを依頼。その時Yuthananは動物にハマっていた時期で興味赴くままに動物を片っ端から描いてもらったのだとか。 「依田くんとはずっと仲良かったけれど彼の作品を持ったことがなかったんだ。作品として作ってもらったつもりだったけどすごい気に入っちゃったから自分で着るようになったんだ。彼を知ってもらうことにもつながるし、一石二鳥さ(笑)」   ITEM2 “BaeMa T BoA” Dad & Son shirts 2つ目のアイテムはYuthananの友人が今年スタートしたブランド”BaeMa T BoA”のペアシャツ。ベースボールシャツに襟をつけた特徴的なデザインにYuthananのセンスが光る。ハンドソーイングならではの非対称性が柔和な印象を与えているが、これはYuthananの人間性を表しているように思える。 「フランスのモデルの友人がこのブランドのものを着ていて一目惚れしたんだ。日本人の友達も好んでオーダーしているよ。ちなみにこれはマイデザイン。このブランドはパーソナルオーダーなんだ。オーガニックコットン素材のリサイクルファブリックだから、ボタンにもリサイクルものをセレクトしたよ。環境や自然がテーマだからワッペンは大好きな動物にしたんだ。きっとこれから大きくなるブランドだと思うけど、こうやって新しいブランドを紹介してサポートすることも楽しんでいるよ」   ITEM3 “JUNYA WATANABE COMME des GARCONS MAN” Millitary Vest カメラも仕事にしているYuthanan。このミリタリーベストを着るときはもっぱら仕事の時でコーディネートもほぼ変わらない。所謂、作業着だ。こんなシャレた作業着であれば誰でも着たいと思うだろう。管理しきれないほど大量の洋服を持つYuthananは、昔の洋服を掘り出すことはそう頻繁にはしないそうだ。しかし、このベストは購入してから5年ほど眠らせていた。 「フランスでも日本でも見つけることができなくて、たまたまカナダで買えたんだ。けれどフランスでは着ることができなかった。見たらわかると思うけど、本格的なミルスペックだからフランスだとかなり刺激的に捉えられるんだ。こういった部分はヨーロッパはセンシティブなんだ。ファッションで買ったのに着ることができないんだ。だから日本で本格的にカメラマンのキャリアをスタートしたときに使い始めたのさ」。   ITEM4 “NIKE” D/MS/X WAFFLE 箱から出てきたこのスニーカーはまだ真新しい。「今日、初めて履くよ」と、今回の企画のためにわざわざ新品を下ろしてくれた。サービス精神も旺盛なYuthananはこのスニーカーに特別な思い入れがあるようだ。 「これは僕とのコラボなんだ。コラボと謳っていないし、シークレットだから巷で知ってる人はいないんだけどさ(笑)。80‘sのNIKEのスニーカーがモチーフなんだ。僕のSNS投稿内容を見たオレゴンのナイキタウンで働いている友人から『このモチーフ、使わせてくれないか?』って連絡がきたんだ。まさか自分の投稿がモチーフになるなんて思っていなかったから興奮したよ。答えはもちろん、Yes。今日までクローゼットにしまっていたけどせっかくの機会だから持ってきたんだ。履き心地?いいに決まってるさ!」   ITEM5 NEW BALANCE 990 Incense Chamber アイテムフォーカスのフィナーレはNEW BALANCE 990を型どったインセンスチャンバー。スニーカー好きの彼らしいアイテムをよく観察すると、ソールが擦れているし所々にシワもある。 「これは僕が履いていた990をモチーフにして友人のセラミックアーティストに作ってもらったんだ。渡したものをそのまま再現してもらったからディテールが面白いんだ。名古屋は瀬戸が近いだろ?その友人は名古屋に住んでいるから瀬戸で作ってもらったんだ。正真正銘の瀬戸物だよ。彼自身はロックでダークなアーティストだけど、これは僕に合わせて作ってくれたんだ。今はナイキのリフトで作ってもらっていて、次はアシックス、その次はパラブーツ…、その次は、なんだろうね(笑)」 自分のイメージするものを具現化する術を持っているYuthanan。パラブーツの次も楽しみだ。   INTERVIEW ―Yuthananの簡単な自己紹介と日本で活動している理由を教えてください 僕はフランス生まれで日本には4年前に来たんだ。母がタイ人だから小さい頃からアジアに興味があって、将来的には移り住んでみたいと思っていたんだよ。自分のルーツだからね。歳を重ねるにつれて自分を表現できる場所を求める気持ちが強くなっていったんだけど、それは生まれ育ったパリでは無いと感じ始めたんだ。 パリはメゾンのカルチャーが根付いているから個が表現できる隙間が無いのが悩みだった。だから自分を表現できる場所を探したんだ。その行き着いた先が東京だった、ってわけさ。東京は安全だし、自分が思っていることを自由に表現できるからとても気に入っているよ。 ―Yutananの表現活動で様々な人から支持をされているインスタグラムでは洋服やアート、スニーカーなど様々なアイテムが紹介されいています。今回はワードローブ企画なのでワードローブに絞って質問します。どのくらいの量の洋服を持っていますか? 自宅のクローゼットはいっぱいだし、倉庫を持っているくらいだよ。だから数えきれないな。倉庫のクローゼットの扉を開けたら最後、ザザーっと雪崩のように洋服たちが落ちてくるからなかなか開けることもしないよ(笑)。 日本のクローゼットは僕には小さすぎるのかもしれないね。だから家のクローゼットは大好きなアイテム、帽子だけでいっぱいになってしまっているよ。ちなみにスニーカーは250足ほどだね。 ―昔の洋服はまた着たりするんでしょうか?それとも処分したりしているんでしょうか?Yuthanan流断捨離方法があれば教えてください おそらくみんなと変わらないんじゃ無いかな。海外のオンラインフリマアプリとかで売ったりしているよ。けれどアカウントはシークレットなんだ。雪崩が起きるほど倉庫にたくさん洋服はあるけれど、何があるかはしっかり覚えているよ。だからまた着ることもある。そんなことは稀だけどね。 ―お気に入りの洋服のメンテナンス方法は? 実は特別なメンテナンスはしていないんだ。それにはある体験があってね。パリに住んでいたときに実は僕も同じようなことを”CASEY CASEY”のデザイナーに聞いたのさ。返答は『高級でいい服にシミがついたとしても気にしない。それが自分の歴史じゃないか』って。なんて素敵な考えなんだ、って思ったよ!それ以降は例えばラーメンのスープが飛んでも帰って洗濯機に入れるだけだよ(笑) ―ソーシャルメディアの時代にコロナ禍が重なり国内では洋服の購買行動に大きく変化が起きました。Yuthanannクローゼットの中身はその間に変わりましたか? ほとんど変わっていないよ。僕は体が大きいから元々、日本のものはサイズが合わないことが多くて自分で理想にしているものを具現化するためにSillageを始めたわけだしね。けれどオンラインで買い物することは増えたかな。今はインスタグラムでも直接買い物することがイージーになったから、新しいブランドを見つけるのも楽しみの一つになっているよ。だからと言ってお店に行っていないわけではないよ。むしろお店に行くことは大好きさ!ショップスタッフのコーディネートを見るのが好きなんだ。 ―最後に、オンラインでのファッションを楽しみ方を教えてください 【自分が好きなことをとことん楽しむ】ということさ。SNSの発信量が多いからよくインプットするためには何をしているかとか聞かれるんだけど、僕は特別なことは何もしていない。ただ自分が好きなことをやっているだけなんだ。オンラインが発達したことによって自分の考えを世間に伝えられる人が増えたと感じているよ。誰でもクリエイティブに物を売れる時代になってきたことはとてもポジティブなことだと思うんだ。ファッションは楽しむ物だと僕は思っている。これからも今までと変わらずSNSで自分を表現していきたいと思っているよ。   SHOOTING LOCATION : WARDROBE TREATMENT https://aobadai.wardrobetreatment.jp/ 究極のオーダーメイドクリーニングを実現するコンシェルジュストア。ワードローブトリートメントの旗艦店として目黒区青葉台に2018年4月にオープン。お客様がお持ちのアイテムへの愛着度を理解して、より最適な復元の提案ができるように洋服メンテナンスを熟知したコンシェルジュが直接お話を聞きながらカウンセリングを行うクリーニングストア。お客さまのお洋服1点1点のコンディションに合わせてオリジナルの洗浄工程を提案。日本随一を誇る特殊しみ抜き、それをささえる補色技術が好評を得ていることはもちろん60年以上の歴史を誇るプレスワーク、レザーアイテムのリペアなど各分野のスペシャリストが各工程を担当します。ワードローブトリートメントの洋服メンテナンスのこだわりを是非店頭で体現してください。

RANKING